欧州新興国のインフラ建設

昨日、ブルガリアの交通政策予備調査の記事を紹介しました。その記事の裏付けとしてプライスウォーターハウスのBuilding New Europe's Infrastructureという報告書も併せて紹介しました。今日はこの報告書をメインに、日ごろニュースの少ないというか、日本から投資が向かっていないために目にすることのない中央および東ヨーロッパ(CEE)のインフラについて考えてみたいと思います。

まず最初にヨーロッパ投資銀行(EIB)の資料によると但し書きをつけ、1.CEE域内でインフラ投資に5000億ユーロが必要だと見積もられている、2.2007-2013年期に1800億ユーロのEU資金がインフラ用に用意されている、3.7年間のEU Cohesion Fund(結束基金)は過去15年間に英国が締結したPPP総額の4倍にあたる、と記しています。

このCohesion Fund(結束基金)とは、加盟国にはフランスやドイツなどの富める国とギリシャやポルトガルなどの遅れてきた国があり、それら格差是正のための基金で、1人あたりのGDPが加盟国平均の90%を下回る国に環境およびインフラ整備計画に資金を投入するものです。

さて、インフラに5000億ユーロ(約80兆)を越える資金が必要とされるCEEですが、ルーマニア、ブルガリア、ポーランド、ハンガリー、チェコあたりは思い浮かびますが、ほかにエストニア、ラトビア、リトアニア、スロベニア、スロバキア、ウクライナが含まれます。ここで思わずウクライナまでなのかと、少しびっくりです。

この5000億ユーロの3分の1(36%)は、既存上下水道インフラの維持管理と再生関連事業で必要とされています。全プロジェクトの22%は、増加するエネルギー需要を満たすための発電所建設費用です。これに加え14%が再生可能エネルギー源による発電など環境プロジェクトを対象としています。既存インフラの近代化を含め、800億ユーロが交通インフラ開発に向けた道路9%や鉄道7%関連の事業です。さらに通信プロジェクトが12%を占めています。

ここで思うのは既存の上下水道の維持管理と再生関連事業の大きさと、交通関係が結構すくないことです。新設ではなく維持管理と再生ということは、上水であれば浄水場や漏水の改善でしょうし、たぶん下水道の維持と改善に多額の費用が必用なのだろうと推察します。

これらインフラ投資の大部分は、EU資金に裏打ちされた公共部門により調達されるでしょう。当然のことならが、全てが公共投資で行われるはずもなく、官民パートナーシップ、いわゆるPPP
スタイルで行われるでしょう。しかしこれら各国はPPP実施に向けた法整備の途上にあり、そのペースはゆっくりしたものといわざるを得ませんが、整備が進みつつあることは事実です。

この報告書を読んでいて興味を引いたのは「Credit crunch not hampering PPP deal flow in CEE」の項目があったことです。西欧や米国に比べCEEでは金融仲介活動があまり盛んでなかったことに加え、金融機関がPPP締結に向けた借入による資金調達に熱心でなかったことから、同地域におけるPPP契約においてこの信用危機による影響は少ないとしていることです。また昨年11月にPPP形式で締結されたハンガリーのM6道路を例に挙げ、きちんとした財政計画・建設目的・工事構成のPPPは資金繰りの問題は全くないとしています。

環境に負荷の少ない開発が実施できるのは、後からやってきた者の強みですが、(AA各国では電話線を引くより、最初から中継基地を建設すればよい携帯の方が効率が良い)金融面においても、この種のことが言えるのですね。

さらに2012年にポーランドとウクライナで開催されるサッカーの欧州選手権を挙げ、これら両国を中心にスタジアム、ホテル、スポーツ施設に加え、道路、空港、鉄道、トラムプロジェクトに資金が投入されるだろうとしています。

インフラプロジェクト実施のスタイルはPPPとされていますが、現在西欧で実施されているハイブリッドPPPが一般型のPPPと併せてCEEでも利用されるでしょう。
ハイブリッドPPPにおいてEU資金は一般に、資本支出補助金を効果的に供与する(政府にとり負担感の低さだけでなく、この種のプロジェクトの担保可能性改善に役立つ)資本補助の形で投入されます。

PPPが万能ではない、破綻したPPPもけっこうある、この認識が新しい資金供与の形を開発するのですね。

最後にこの報告書にある国別の大型インフラ開発と部門別大型インフラ開発をご紹介しましょう。

国別大型インフラ開発
ハンガリー:19、ルーマニア:15、ポーランド:11、スロバキア:9、チェコ:9、ブルガリア:4、ラトビア:1、

部門別大型インフラ開発
道路:22、空港:16、鉄道:6、スポーツ娯楽施設:6、学校:5、政府施設:4、刑務所:2、発電施設:1、上下水道:1
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by fukimison | 2008-07-10 11:57  

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