カテゴリ:景観( 43 )

 

ロシアの景観紛争

本日はなかなかニュースがでないロシア、しかも景観紛争です。
場所はサンクトペテルブルグ、その昔ロシア帝国と言った頃の首都です。
モスクワに対するサンクトは東京に対する京都みたいなものだろうと想像します。

そのサンクトで400mの高層ビル建設計画が持ち上がり、住民説明会は乱闘に発展したというのが本日のお話です。(このあたりとてもロシア的と思うのは、ステレオすぎるでしょうか?)

The St.Petersburg Timesは記事Violence Flares at Gazprom Tower Hearingで「9月1日に行われた3度目、そして最終となる高さ400mのガズプロムタワー公聴会で暴力沙汰が発生した」と伝えています。ガズプロムはロシア最大のエネルギー会社で、これもまた世界最大の建設企業RMJMの提案する超高層ビルの建設を目指しています。

古都サンクトで計画される400mのビルです、同市の景観保護主義者や多くの住民は、このタワーによりサンクトのスカイラインや景観が阻害されることを懸念しています。記事を読むと平服警官や警備員が配置され、暴力沙汰の結果7人が逮捕されたとあります。公聴会が開かれたカレリアホテルは中も外も警備が厳重で、会場に至るまでにセキュリティーチェック3カ所、金属探知機2カ所を通るとあります。

公聴会は4時間ぶっ続けで行われ、また350名収容の会場に多くの人が詰め掛けたため、通路に立って参加できたのは良い方で、会場、人によっては建物にすら入れなかったそうです。記事によれば住民対策会社が雇った有償賛成者が先に入場していたようです。

この会の目的がサンクトの高度地区規制、48mより高い建物は建てられないというゾーン規制を変更しようというのがわかると、この旧石器時代的なやり方があきれながらも理解できます。

9月2日付けのBD誌のClashes over RMJM's Gazprom towerによれば、ユネスコはこのタワーの建設が実施された場合、サンクトの世界遺産は剥奪されるだろうと警告を発しています。ユネスコの警告はこちら

なかなかスキャンダラスな計画で、2006年にRMJMがコンペでまさかの入賞を決めた時、審査員として参加していた著名な建築家が退席しています。(この中にはかの黒川紀章氏も)

RMJMは声明で「サンクト市は建築規則や高層建築への規制を見直している最中だ。100mを越えるビルの建設規制変更に向け、市議会が最初のステップであり、当社はこれに向け議会をサポートするものだ」としています。

といいながらも、金融収縮の影響を受けるロシア、サンクト市行政はこの計画に資金の40%を提供すると言ってたのですが、建設費が30億ドルに登ることから撤退を表明、しかしガズプロムは自己資金で全て賄うとしています。
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by fukimison | 2009-09-04 11:59 | 景観  

またしてもロジャース案、拒否される

先日来お伝えしているチェルシーの再開発問題とは別件ですが、建築家のロジャース氏による大英博物館の新館増築計画が、地元自治体の拒否により頓挫したというニュースです。

これは7月24日付けのGuardian紙がRichard Rogers's British Museum extension plan turned downとして伝えたものです。

さらに同日のBuilding紙もBlow to Rogers as £135m British Museum plans turned downとして紹介されています。

まずガーディアンの記事からです。同紙は「大英博物館は1億3500万ドルをかけてガラスのパビリオンによる新館増築を計画していたが、地元の反対にミカタした議会プランナーにより計画が拒否され深刻な打撃を受けた」で始まります。そして「美術館の担当者はカムデン議会の計画委員会が3時間の討論の後5対4で申請却下という驚きの決定を下したこと受け、今後の対策に頭を悩ませている」と続きます。またこの新築計画の最大の問題は資金であり、設計ではないと受け止められていたことから、議員がBloomsbury Conservation Society(大英博物館のあるBloomsburyの保存協会)の反対に動かされたことに驚きをもって迎えられているとあります。

BCSを代表してプレゼンテーションを行った建築家のCullum氏も「私自身、この結果に驚いている。しかし大変うれしいし、改めて小規模、控えめ、より多方面に配慮し、もちろん安価な計画を立ててほしい」とコメントしています。

カムデン議会は「委員会は同計画がもたらすプラスとこの計画に含まれる設計上のマイナス面を慎重に検討した結果、マイナス面が勝ると判断した。当議会は今後もコミュニティーおよびこのプロジェクトの前進に関係する諸団体の懸念に対し、対処するものだ」と声明を発表しています。

一方でBuilding誌はこの決定を下した議員の1人Braithwaite氏のコメント「ロジャース氏の計画はあまりに過開発だ」を伝えています。しかし「この17,000㎡の開発計画(保存研究所、収蔵庫、展示区画などの5つのパビリオンで構成)に対し、地元のBCSが反対する一方で、English HeritageとCabeは支持を表明していた」とあることから、この計画もチェルシーの時と似たような状態(公的な機関は良いとするものの、地元民は反対)にあったのではと推測します。

記事は、この計画は政府が補助金の削減を発表したことよりも重く受け止められているものの、博物館側は強気で、この計画の基礎構造部分(450万ポンド)の入札参加者募集の発表をしているで終わっています。
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by fukimison | 2009-07-27 12:28 | 景観  

建設と景観、ザハ・ハディッドの場合

何度もお伝えしてきたチェルシー再開発のケースは、チャールズ皇太子の行動に光があたることで、その背景にある景観を問いたいのだか問えないというジレンマが透けて見えるものでした。

そして本日お伝えする記事はスペインで起きた景観事件です。英国以外の国々の状況が少しはわかることを期待しての情報です。

これは6月25日付けのBuilding誌に載ったSeville residents halt Zaha Hadid libraryという記事です。

まずザハ・ハディッド(Zaha Hadid)の紹介から。彼女はバグダッド出身で英国を代表する女性建築家で脱構造主義の旗手の1人です。また女性ではじめてプリツカー賞を受賞しています。詳しくはwikiをご覧ください。

その彼女がセヴィル(スペイン南部アンダルシア州の州都)でおこなわれる図書館(400万ユーロ)建築の設計をおこなったところ、計画案が地元住民の反対にあい頓挫しているというお話です。

記事によれば、この建設により保護緑地が侵害されるとした住民の申し立てによりアンダルシア高等裁判所は、セヴィル大学の新図書館(3階建て)工事中止を言い渡したとあります。

ハディッド自身はこの図書館を「sculpted bar of stone」と表現しているそうです。
なんとなく、反対運動を呼びそうな建物という気がします。

しかし地元民を激昂させたのは単に設計の質だけでなく、地元民の憩いの場所であるSan Sebastian公園の約8%もを占有することになるからだとあります。

セヴィル議会はこの図書館建設のため都市計画法を変更したのですが、地元住民の訴えにより高裁はこれを覆しています。
(日本でもよくあるパターンですが、裁判所が住民側を支持するというのはまずないですね)

現在議会は新図書館は観光客の誘致に役立ち、また文化的な評判を高めるとして、決定を上訴する計画です。

彼女の作品はちょっと過激なので、コンペで優勝してもなかなか実現(建設)に至りませんし、最近では中国の広州で建設中だったオペラハウスが炎上したと言う事件(Fire hits Zaha Hadid's Guangzhou opera house)もあります。完成していれば中国で始めての彼女の作品となったでしょうし、記憶に新しいコールハース設計のCCTVビルの火災など、著名建築家の設計建造物の火災が多いのが気になります。
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by fukimison | 2009-06-26 11:20 | 景観  

英国、大規模開発におけるチャールズ皇太子の存在

これまで数回にわたりチェルシー再開発の話題をお伝えしてきました。開発手順、景観、地元住民と地元議会、開発事業者や建築家の問題のみならず、チャールズ皇太子がかかわったことで憲法議論にまで波及してゆく英国、それに比べ、単一的な建設反対や建物保存運動に終始してしまい、分厚い建設・景観・都市開発問題に広がらない日本、残念です。

どのような決着がつくにしろ、オープンで時間を切らない、せめて大規模開発であれば年単位で議論し、その議論に地元住民が中心となって係るのは当然ながら、その地への通勤・通学、そして遊びに行く人々も加わった意見の場、そしてそれが取り上げられるデュープロセスの保証が決め手に感じます。そんなこんなで、もうすこし英国の景観形成、とくにチャールズ皇太子の存在に注目して行こうと考えました。

その第1回目は6月19日のBuilding誌に掲載されたPrince Charles given say in major London schemesで、同誌は「バターシ発電所やキングスクロス再開発プロジェクトを含め、ロンドンの数ヶ所で行われている大規模再開発の事業者は、チャールズ皇太子の計画介入によって引き起こされる損害を避けるため、定期的に皇太子と計画のチェックを行っている」と伝えています。

このことはチャールズ皇太子の圧力によりロジャースの設計になるチェルシー計画がが撤回された後、キングスクロス計画(800万平方フィート)とバターシー発電所再開発計画の開発事業者であるArgent および Treasury Holdingsが、両計画は皇太子に提示されていたことを明らかにしたことによる。

6月16日に行われたBritish Property Federationの年次総会でTreasury Holdingsの取締役はバターシー発電所再開発計画に言及した際「チャールズ皇太子と設計に関し協議を行った」と述べた。さらにAgent Group創始者もキングスクロス計画も同じように行っており、「皇太子は大きな影響力を持っている」と述べた。

Igloo社(開発事業者)の役員は、大規模開発においてクラレンスハウスと協議することは慣例となっている。しかし 個人的な考えでいえば、「皇太子の考えに大部分は同意するものの、皇太子が非常に大きな影響力を持っているのは不適切だであり、それは正しいことといえないだろう」と述べた。

チャールズ皇太子はそこまで水面下でかかわっているのかと驚いたら、逆に「British LandやHeronといった開発業者は、皇太子と計画協議を行わない」と述べたとあり、どうも皇太子から意見は付されるけれど、当然ながら強制力はないといったところなのでしょう。
いわゆる見えざる手というか、影の声といったものだと想像します。

では、今回のロジャーズはどうして表にでてきたのかという疑問がありますが、それはいろいろな意味での程度問題だということでしょうか?
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by fukimison | 2009-06-22 10:01 | 景観  

ロジャースの反撃

もういい加減にチェルシー問題は終わりにしようと思うのですが、イギリス人はクールという評判ですが、実際はなかなか熱い人が多いようでロジャースが反撃にでました。

2年半の歳月をかけ、10億単位の仕事が鶴の一声で消えたのですから腹も立つし、こういうことが前例になってはいけないという正義感もあるようです。

まず、6月16日付けのガーディアン紙のインタビュー記事Prince Charles wrecked my Chelsea project'「チャールズ皇太子はチェルシープロジェクトを破壊した」と攻撃的です。出だしは先週の金曜日の朝9時にオフィスの電話が鳴った。相手はカタールの王族で悪いニュースを伝えてきたと大変ドラマチックです。
簡単に言えば、ロジャースにとって皇太子の干渉はパタノスター広場、オペラハウスそしてチェルシーと三度目だそうで、皇太子の介入に関する憲法上の正当性について公式調査を求めるとしています。

ガーディアン紙だけでなく、BBCもArchitect Rogers angry at Prince 「建築家ロジャース氏、皇太子に激怒」としてインタビューを報道しています。

大体においてガーディアンに載っているのと同じようなことですが、BBCの方は「こういった前例があると、計画半ばで皇太子の好みで干渉がおきることを恐れる外国企業が英国に投資しなくなる」と言っていますが、それはちょっとどうかなぁ。

ロジャースはチェルシーの計画を自分のアトリエが作り出した中でも最高のクオリティーの1つだと絶賛しています。

正直に言えば、建築、デザイン、開発でこれだけ議論が出る、報道される、熱くなる英国がうらやましいです。もっともっといろいろな角度から議論される土壌が日本に欲しいなぁとつくづく思います。
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by fukimison | 2009-06-16 21:27 | 景観  

チェルシー再開発白紙撤回

土日は休むことに決めているのですが、イギリスの都市開発制度に関心を持つわたくしとしては見逃すことのできない記事だったのでおしらせです。

6月11日付け建築専門誌のBD誌はチェルシー再開発について、ウェストミンスターのプランナーによる正式な報告書(122ページ)はガラスとスチールのモダニズム建設、17棟に548戸の計画を支持し、18日の決定委員会を前に現行計画大きく前進と伝えました。

そうしたらなーんと12日、お金の出し手であるカタールの王様は申請書を取り下げたという記事がでました。

個人的に面白いと感じたことをいくつか、

行政系の報告書はどこも同じ

1、この計画は取得可能住宅の建設が含まれており、これは同区議会の住宅目標に貢献することで歓迎すべきだ
2、住宅が過密であるという申し立てに対し、政府のガイダンスは都市部の高密度計画を奨励しているとすげなく却下
3、周囲の歴史的景観に対しモダンな六角形のパビリオンはそぐわないという申し立ても、ことのほか高品質の計画と絶賛
4、地元にとり、5.18haの敷地にホテル、スポーツセンター、コミュニティーホール、店舗、レストランが建設されるが問題とはいえない。

こんな報告書が提出され、しかも購入してから2年半、開発に向けた下準備に3000万ポンドも費やしていたのに、Qatari Diarは計画を取り下げたのです。

10日ぐらい前からカタールは嫌気がさしているので、取り下げるらしいという報道はありましたが、現実となりました。

カタールはロジャースよりもチャールズ皇太子との友好関係(今回のケースは貸しになりますもの)を作る、イギリスの世論はチャールズに傾いていた(報告書は反対意見が400超寄せられたと明記)ことからこれを逆なでするのも得策で無い、おそらくロンドンの開発業者との合弁会社設立契約書も何かあった場合の収め方が記載されており、凄い額の賠償を支払わなくても済むといった総合判断がくだされたものを想像します。

建築家のロジャースは10億ポンドの再開発計画が消えて「とても残念だ」とコメントを発表(それはそうでしょう。この不況下、大型案件は中止や延期が相次いで、建築設計事務所はどこもリストラの真っ只中です)

Qatari Diarは改めてコンペを行うとしていますが、チャールズ皇太子のPrince's Foundationを含め複数の関係者と協議をしていく予定と発表

チャールズ皇太子の完勝!

チャールズ皇太子が嫌いなロジャースのビルはこちらです。
近未来を舞台にした映画のセットに向いていると思います。
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by fukimison | 2009-06-13 10:53 | 景観  

オックスフォード大学でも景観論争

チェルシー再開発のみならず、オックスフォード大学の公共政策研究所校舎建設(3000万ポンド)をめぐり、現代様式Vs古典様式のどちらの設計案を採用するか決着がつかず、このデッドロックを乗り切るため米エール大学のスターン教授を迎え入れたそうです。

これは6月5日付けの英建築専門誌BDがOxford University calls in Robert Stern to end competition deadlockと題して報道したものです。

オックスフォード大学は2004年に隣接するRadcliffe Infirmary(4ヘクタール)を買収し、12億5000万ポンドをかけ、新キャンパス建設にのりだしました。いままでのキャンパスが手狭というのは想像がつきますし、この公共政策研究所の建設も、新キャンパス構想の一環と言う位置づけです。

modernistとtraditionalistの戦いですが、Dixon Jones案とJohn Simpson案があり、これを巡ってオックスフォードの教授陣が2派に別れ、決着がつかない程の論争になっているのだそうです。

オックスフォードの教授の論戦、どんなものなのか見てみたい。

スターン教授は自分のことを「modern traditionalist」と称しているそうです。
新研究所の計画案公開が予定されていたものの、理由もはっきり説明されないまま開始の数日前に中止されています。

スタイル論といえばチャールズ皇太子ですが、ケンブリッジ出身のせいか、この論争には参加していないようです。

それからチェルシー再開発ですが、資金主のカタールの王族がこの騒ぎに嫌気が差してロジャース案を引っ込めると言っているという報道があったものの、計画書自体は取り下げられていないため、6月18日の会日を前に、6月8日ウェストミンスター区のPlanning Committeeが3時間半をかけて現地調査を行ったという報道がありました。

調査風景の写真

これだけスタイルで熱くなれる国民、ちょっとうらやましいです。
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by fukimison | 2009-06-10 09:06 | 景観  

英、バターシー再開発計画の新提案

2009年2月にバターシーのエコタワー計画撤回と題して、バターシーにある元火力発電所の再開発で高さ300mの透明な煙突を核とする計画が撤回されたとお伝えしました。本日はその続報です。

6月4日のNCE誌はNew designs for Battersea revealedとして新再開発計画を伝えています。

以前の計画と比べ、敷地中央にある火力発電所よりも高い建物がひとつも無いことが最大のポイントでしょう。そして約3700軒の住宅、150万平方フィートの床面積を持つ事務所、50万平方フィートの小売店やレストラン、ホテル、レジャー施設そしてコミュニティー施設が予定されています。再開発を行うことで何千もの建設作業は言うに及ばず、開発関連で16500の新規雇用が生まれるとしています。またこの計画は南西ロンドンのNine Elms地域活性化の起爆剤となると期待されていますし、さらにケンジントンからバターシー火力発電所を通るNorthern線の延伸計画も同地域の活性促進に役立つ見込まれていると記事は伝えています。
開発業者のTreasury Holdings UKは6月6日ごろから住民に計画検証を求める予定だということです。

この計画のパースがBattersea Power Station redesign unveiledとしてBD誌にあります。これによると火力発電所の周りをプールというか池にとりかこみ1930年代のアールデコ様式を際立たせる。発電所の内部はオフィス、店舗、レストランや住宅に改築するのは良いのですが、パースで見る限り敷地内に建つビルがちょっと屏風風なのが気になります。建物を低くして採算を合わせようとするとこうなるんでしょうが、住民がどう反応するか公聴会の行方が気になります。

撤回されたガラスタワーの計画ができるまで2年間の協議を行い、そしてさらに新計画の協議を行なう、チャールズ皇太子が介入したことで有名なチェルシーの再開発も、皇太子介入まで2年近く協議を行っていた。2年という時間とお金をかけ、これで行けると思っても覆される可能性がある、事業主の採算性という点から言えばとんでもないリスクビジネスですね。
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by fukimison | 2009-06-05 10:42 | 景観  

チャールズ皇太子のRIBAスピーチ

チェルシー再開発計画に関し、事業者にロジャース案の再考を求めたチャールズ皇太子の記事やこれを干渉として批判した有名建築家のことなどいろいろとお伝えしてきました。

景観に一家言をお持ちのチャールズ皇太子と現代建築家の対立は1984年に同皇太子がイギリス建築士学会(RIBA)で行ったスピーチに端を発します。この時ナショナルギャラリーの拡張計画案をmonstrous carbuncle on the face of a much loved and elegant friend’=我々の親しんだ優雅な友の顔にできたぞっとするような吹き出物と評し、建築家と険悪な関係が決定的に成りました。

それから25年、RIBAが創立175周年記念スピーチを皇太子に依頼し、それが発表された直後にチェルシー再開発に対する皇太子の干渉、有名建築家の意見広告、RIBA記念式典のボイコット呼びかけがあったものの、キャンセルは一件もなく満員の盛況だったそうです。

世間の耳目を集めたスピーチ、いろいろなところで報道されています。
World Architecture NewsはPrince initiates truce at RIBAとして、BD誌はPrince Charles warns of 'gulf' between architects and societyそしてRIBAで皇太子がなさったスピーチ原稿はこちらです。

全体として風向きが変わった、皆大人になったというのが率直な感想です。

皇太子のスピーチは25年前のスピーチを謝罪することから始まり、チェルシー再開発案には一切触れず、また古典的な建築と近代的な建築を比較するのではなく、近代建築にも良いと感じる物はあると率直に述べています。皇太子が環境に配慮した建築を進める財団を組織していることや最近のグリーンビル・持続可能な建築というのがRIBAにおいても重要視されていることから、スピーチはこちらを主眼に置いたものとなっています。といういうものの、重要な本としてアレクサンダーのThe Nature of Orderをあげたり、建築はトップダウンではなく、ボトムアップであること、コミュニティーの気持ちが反映された建築であって欲しい、といった言葉がちりばめられているのが悩ましいところです。
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by fukimison | 2009-05-14 11:10 | 景観  

チェルシー再開発の論争

昨日に続きチェルシー再開発におけるチャールズ皇太子の干渉についてです。

昨日は19日付けのTimes紙にのった著名建築家の意見広告についてお知らせしましたが、Times紙を良く見ると同じ日のeditorial section(論説欄)にA Prince who just happens to be rightという皇太子を擁護する記事があり、両者をお知らせしなければ公平さを欠くと思いご案内します。

記事は出だしから「Prince of Walesは建築に関する論争について素人ではないし、長年にわたり血みどろの戦いを行ってきた。しかし皇太子は常にその立場を注意深く選んできたし、対立はほどんど無かった。」と皇太子に好意的です。

記事は皇太子が異議を唱えた過去の例(1984年のナショナルギャラリーの拡張やセントポール寺院ぞいのPaternoster開発)を紹介し、彼の立場や影響力からこれらの事例は勝ったものの、最近では従来の住宅設計による開発を支援するPrince's Foundationに力を注ぎ、建築に関しては「目立った活動」を行ってこなかったと伝えています。

しかし第3パラグラフで「だからこそ、チェルシーバラック計画への干渉は意味深い」とし、皇太子の干渉に腹を立てた著名建築家の意見広告について「建築家はチェルシー再開発を今後5年間でロンドンで建築される住宅プロジェクトで最も重要なものの1つへとしいるが、このような国際的に著名な建築家が一緒になって、皇太子が立場を利用して介入したと糾弾したことはかつてなかった」とその反応の大きさを伝えています。

この意見広告に名前を連ねた建築家の代表作をしめしたあと、論説者は「しかし彼らとて完全無欠ではない。ロジャー卿はヒースローのぱっとしない第5ターミナルを、フォスター卿はバーミンガムの不体裁な水族館や前の市長がガラスの睾丸と評したロンドン塔の向かい側にある市長執務室を設計してる」とし、さらに「これらすべての開発業者がパッとしない醜い建物を急造しているように、建築家の判断力に疑問がある。地元民は計画プロセスに少ししか影響を与えられないと不満をいい、また計画プロセス自体もしばしば不透明だ。と完全に皇太子のサイドにたった論説を繰り広げています。

極めつけはこのパラグラフの最後で「貪欲な開発業者や古典的な設計を軽蔑する傲慢な建築支配者集団に対し、時には彼らに立ち向かう影響力の強い意見が必要だ。これが皇太子の意見が普及し、レーン(セントポール寺院の設計者)のライバルによるロンドンの開発が終わる機会となるように」という論説というより筆者の願望で終わっています。

プロセス違反を申し立てる建築家と景観論争をしかける論説者、同じ日の新聞に両者が載ることでバランスをとっている新聞、いろいろな面から日本とは違った社会が見えます。
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by fukimison | 2009-04-22 12:34 | 景観