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チェルシー再開発その後

4月7日に「チェルシー再開発でチャールズ皇太子が意見表明」という記事を紹介しました。
この記事のポイントは景観問題ではなく、皇太子がプロセスを侵害したことに対する批判でした。

そしてこの批判はさらに大きくなり4月19日のTimes紙にThe prince and processとして意見広告がでるまでになりました。

直訳すれば「オープンで民主的なプロセスで行われている最中であり、計画変更(原文ではskew:捻じ曲げる・歪曲が使われています)を求め、皇太子が個人的な意見や水面下でのロビーイングを行わないというのは現代的な民主主義の基本だ」と強い調子で皇太子といえども手続きに従うべきだと批判しています。

問題となっているのは、最近、再開発事業者(カタール資本のQatari Diar)の依頼をうけたリチャード・ロジャースが作成し再開発地の自治体であるWestminster市議会へ提出した書類です。
Times の記事は「この計画は、ウェストミンスターのPlanning Officer(開発専門官)および広範な地元との協議によるコメントに対応し、変更や修正が加えられてきました。また英国建築都市環境委員会(Commission for Architecture and the Built Environment)や拡大ロンドン庁(Greater London Authority)といった法的機関も相談を受けていました。開発業者はこの注意を要するプロジェクト実施に向け、注意深く最良の建築家を選び、またロジャースとそのチームは民主的なプロセスに従って作業をおこなってきました。皇太子とそのアドバイザーたちも同じようにふるまうべきだ」と記事は続きます。

そして記事は「このプロジェクトのデザイン、または他のプロジェクトに関し皇太子がコメントを行いたい場合、我々は規定された計画協議プロセスを介して行うよう要請するものだ。今後5年間にロンドンで建設されるであろう最も重要な住宅プロジェクトの1つに干渉するのに皇太子の特権的立場を利用するのではなく、オープンで透明性のある議論を行うべきだ」という著名建築家の意見書が続きます。

そしてこの意見書に名前を連ねているのは1999年プリツカー賞受賞者のフォスター氏、2004年プリツカー受賞者でイラン出身の女性建築家であるザハ・ハディッド、2001年プリツカー受賞し北京オリンピックの鳥の巣で有名なヘルツォーグ&ムーロン、2008年プリツカー受賞者でありパリのアラブ世界研究所の建築で有名なジャン・ヌーベル、関空の建築家レンゾ・ピアノ、ビルバオにあるグッゲンハイム美術館のフランク・ゲーリーと錚々たる建築家に加え、英国建築都市環境委員会の委員長であったSerota卿やロンドンのDesign Museumの理事まで名前を連ねています。

英国の都市計画はDevelopment Planが建築物の内容を細かく規定しており、またアピールのプロセスも規定されています。
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by fukimison | 2009-04-21 12:25 | 景観  

チェルシー再開発でチャールズ皇太子が意見表明

チャールズ皇太子は建築、特に景観について一家言をお持ちで、「英国の未来像-建築に関する考察」の中で掲げられた建築の10原則は景観について志のある方なら、大部分の方が納得するものだと思います。またチャールズ皇太子の財団は環境と景観に配慮し、なおかつ経済的にも成立する都市開発を実践していたりします。

そんなことからチャールズ皇太子の建築対する発言はけっこう辛口で、景観擁護派の私はいいなぁ、とひそかなファンです。

その皇太子の発言・行動が批判を浴びていると言う記事がBDにでました。それは4月6日付けのPrince Charles urges Chelsea Barracks owner to scrap Rogers Stirk Harbour designというものです。

まず背景を少々説明します。
Chelsea Barracksとは英国防省が所有する5.2haの土地で、2007年にカタールの王族が所有するthe Qatari Diar Real Estate Investment社とCPCグループで構成されるDeveloper Project Blueが10億ポンドで購入し、再開発をめざしていました。開発計画は建物の高さや規模の低減や緑地の拡大を求められ、またゲーテッドコミュニティーだと批判を受けていました。このあたりに関しては2008年8月のRSHP plan for Chelsea Barracks under attackの記事が面白いし、パースを見ると確かに住宅部分と公開空地部分が分離していて変です。でも雑木林のような空地が用意されるはうらやましい。

本題に戻ると、チャールズ皇太子が個人的にこの土地の所有者であるカタールの企業にコンタクトを取り、彼らの開発計画、(近代的なガラスやスチールの建物)は隣接するクリストファー・レン(17世紀の天文学者であり建築家、ロンドン大火後のセントポール寺院の修復やバロック建築を英国に取り入れたことで有名)が設計したRoyal Chelsea病院とそぐわないと再考を申し入れた。この皇太子の行動は立案過程で干渉すべきでないと考える多くの論者の怒りを買ったというものです。

ではどのような開発計画かというと、設計はリチャード・ロジャースのRogers Stirk Harbourが行っており(ロジャースはモダニズム・ハイテク系の建築を行い、2007年のプリツカー賞受賞者です)当初は640戸の住宅が複数棟に分けられて建設とされていましたが、各界からの反対により、住宅戸数を減らし空地を広げることで決着しました。

そこへ持ってきての皇太子の反対なものなので、前ロンドン市長のリビングストン氏がロジャースは英国の誇る立派な建築家だとか、事業主のカタール企業はロジャース案を支持しているとかいろいろな意見があげられています。

近隣の既存建築物との調和は必要なことだと考えますし、自分の意見をはっきりという皇太子の態度、私には好ましく感じられます。

景観・環境に配慮し、維持管理計画もきちんとした再開発、これはどのような種類の開発であっても基本の基であって、これをベースに地域としての自立可能性が加味されるべきと考えます。
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by fukimison | 2009-04-07 11:02 | 景観  

バターシーのエコタワー計画撤回

景観とインフラのことを考えるブログのはずなのになぜか経済系の話題が多くなってしまいます。これは景観系の記事が少ないというのが最大の問題なのですが、そんななか、久しぶりにロンドンで賛否両論だったエコタワー計画が撤回されたという話題です。

まず2月26日付けのBuilding誌にViñoly’s glass chimney axed from Battersea designという記事がでました。

まずこのヴィニオリ、東京国際フォーラムを設計した建築家です。これでわかるようにガラスを多用するので有名です。そこでガラスの煙突(glass chimney)がなんとなく分る気がします。
つぎにBattersea(バターシー)ですが、これはテムズ川の川べりにある4本の巨大煙突で有名な石炭火力発電所です。石炭火力発電所ということで1982年に閉鎖されまた。

開発業者のTreasury Holdingsは2007年にバターシーを4億ポンドで購入し、40億ポンドをかけ750,000平方mの複合利用を行うバターシ発電所の再開発計画をたてていました。その目玉がヴィニオリによる高さ300mガラスの煙突(透明な煙突という記述もあります)とその下に広がるエコドームでした。ヴィニオリのプランでは、この高さの煙突によりその下のエコドームは機械的な冷却装置を設置せずに、新鮮な大気を取り入れることが可能となるもので、 Treasury Holdings社の持続可能戦略の核となるものです。

しかしこの煙突は計画の中で最も議論をよぶものとなっていました。ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏や都市開発担当者は建築家や開発業者に対し国会議事堂や世界遺産のウェストミンスター寺院へ与える影響について懸念を表明し、この計画に反対の意を唱え、建築および歴史建造物保存団体も煙突がロンドンのスカイラインに与えるインパクトについて問題を提起していました。RIBA(イギリス建築士会)前会長は「ロンドンの脅威」とすら評していました。

この計画がCommission for Architecture and the Built Environment(CABE:建築都市環境委員会・デザインレビューやアドバイスについて法的拘束力はないものの、都市プロジェクトに関する助言を行う政府の行政機関)に提出されたのですが、その前にCABEのデザインレビューパネルは煙突、エコドームおよびマスタープランについて大変批判的なことは分っていたことから、この煙突なしの計画がヴィニオリ自身から提出されたそうです。

Building Designにも同様の記事Vinoly's Battersea eco-tower scrappedがあり、その中にそのイメージがありますが、ウェストミンスター寺院の間から見える煙突、これはイカンでしょう。

2008年12月に300mを250mに変更するといっても聞き入れられず、最終的に煙突ナシ、エコドームも規模縮小となった計画書提出です。

とりあえずメデタイ
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by fukimison | 2009-02-27 18:41 | 景観