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ミャンマーのダムプロジェクト

昔はビルマといったミャンマーのニュースです。
軍事政権による専制政治、アウン・サン・スーチー女史の自宅軟禁、一昨年は日本人ジャーナリストが巻き込まれ死亡した大規模な人民開放運動が起きたりと政情不安な様子が伝えられています。
そのミャンマーでのダム建設はいろいろな意味を持っています。

軍事政権はインフラ投資を殆ど行ってこなかったので、首都のラングーンでも電力不足による停電は日常茶飯事と聞いています。以前、仕事でラングーンに行った友人から、夜中に停電が起きると寝ているから分らないので困ると言われ?
よく聞くと、夜中の停電でホテルの貯蔵用冷蔵庫の中の食品は痛んでしまっているのに、朝方に通電し、痛んでいるのに大丈夫そうな雰囲気で朝食に出され、知らずに食べてしまい後で酷い目にあうということでした。

そんなミャンマーで中国企業によるダム建設が進んでいます。
額面どおり受け取ると、ミャンマーの電力不足が解消され、ヨカッタ、ヨカッタなのですが、そうとは限らないのが世の習い。

例えば、雲南省を源とするメコン川ですが、中国がダムを多数建設したため下流のメコンデルタ地帯で漁業が成り立たなくなる、自然のエコシステムが破壊される、塩害が発生する、いろいろ問題が発生しています。

ミャンマーの場合ですが、同地の河川問題を扱っているBurma Rivers NetworkはChinese Begin Dam Construction in Kachin State と題した記事で現状を報せています。

これはミャンマー北部のKachin省で行われるダム建設についてですが、要約するとミャンマーの軍事政権は中国のChina Power Investment社とミャンマーの軍事政権に近いAsia World 社と共同で、Mali Hka川とNmai Hka川に少なくとも7つのダムを建設する計画であり、これにより発電される電力は中国・雲南省の電力網を介して、中国の西部地域や東部沿岸地域に送電される。この売電はミャンマーの軍事政権に年間5億ドルの収入をもたらすだけであり、電力不足に悩むミャンマーには送電される見込みはない。

ミャンマー政府と中国企業はこの水力発電プロジェクトで、少なくとも3,600メガワットを発電することで合意しています。

すでに工事は始まっており、同地で道路建設が行われ、さらにNmai Hka川沿いの3地点で事前調査を行うため、Asia World社は地質学者を派遣しています。1000人超の建設作業員が乗り込み、宿舎の建設も始まっています。

このダムにより47の村が水没し、村民は移住を余儀なくされると見込まれています。

この件については世界的に河川問題を扱う環境保護団体のInternational RiversもHundreds Face Eviction in Kachin State Over Chinese DamというThe Irrawidy Online からの記事を転載しています。

この記事によればAsia World社は水力発電計画を開発する中国国営企業の下請け業者で、中国でも電力不足の雲南省への送電を行うことを主にしている企業だそうです。

ダムとは別に中国、そしてインドはミャンマーの道路・鉄道建設に熱心です。これもミャンマーの人々の生活向上や経済活性とは関係なく、自国の商品を動かすのに便利な外洋港が必要だとか、中東からの石油輸送に便利だとかいったことが主体となっています。

イギリスの植民地となる前のミャンマーはアジアでも豊かな大国であったのが、地政学的な問題、軍事政権による独裁で見る影も無い、そしてインフラ本来が持つ豊かさが無視されている、なんともやり切れません。

by fukimison | 2009-02-03 15:11 | プロジェクト  

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