人気ブログランキング | 話題のタグを見る

世界のクレーン事故

2009年4月、麹町の工事現場でクレーンが横転し通行中の女性が死亡した事故がありました。この記憶もまだ新しい2009年6月3日、板橋のマンション建設現場でクレーンの旋回台の留め金がはずれ落下、作業員1名が亡くなると言う事故が起きました。

こんなにクレーン事故が続くものだろうか?狭い建設用地に高層建築を行おうとした結果だろうか?それとも技術の進歩に人がついていっていないのだろうか?不況で労働環境の低下が起きているのだろうか?いろいろと疑問が沸き起こります。
そこで海外ではどうかと思い探してみました。

クレーン事故というサーチワードで一番に出てきたのがFour killed in New York crane 'freak accident'と題した英・テレグラフ紙の記事で、2008年3月にニューヨーク市で起きたクレーン倒壊事故を伝えています。

この記事によれば、事故は国連に近い51丁目で行われていた43階建ての高級アパート建設工事現場で発生し、隣接する4階建てのタウンハウスを破壊し、他5つの建物に被害を与え、少なくとも4名の死者、10名の負傷者(うち3名は危篤状態)を出しています。事故を起したクレーンは19階までの作業が終わり、数日後には上層階組み上げのため延伸される予定であったと言います。さらに現場監督の言として「スチールの一部が落下し、クレーンをビルに止めつけている結合部の1つがへし折られ、その結果外れて横転した」と伝えています。なんとなく板橋の事故に似ています。
しかし記事には付近住民の証言として「工事が余りに速く進み、作業員は非合法な時間まで作業を行っているとして何度も当局に苦情を申し立てた」と記しています。
さらに記事はこの数ヶ月間にビル建設現場の事故は多発しており、その中にはクレーン事故が含まれるとしているとあります。

他にでてきたのがこれ、Jordan Gate crane repair to take '2 weeks'というタイトルの2009年6月1日付け米ENR誌の記事です。

5月16日、ヨルダンの首都アンマンで建設中の商業・住宅・ホテル施設を組み込んだ2棟の高層ビル(44階・180m)建設からなるヨルダンゲート・プロジェクトで、クレーンが部分的に崩壊した事故です。このクレーンは長さが220mもあり、撤去用に隣国のドバイからクレーンが輸送され、さらに撤去完了までに2週間を要するというのが記事の要約です。幸いなことに死傷者は出ていませんが、付近住民が避難を余儀なくされたとあります。
このタワー建設は2005年に始まったものの、今回で事故による工事中断は3度目だそうで(2006年9月北タワーの3階が崩落し作業員4名が死亡、15名が負傷、同年アンマン市当局が建設工事許可の不備により工事差し止めをおこなっています。このほかにも北タワーの8階から出火したりと相当難ありです)開発業者はバーレーンを本拠とするGulf Finance HouseがKuwait Investment and Finance CompanyおよびKuwaiti Bayan Holding Companyと共同で行っています。

工事は利益確保と安全確保のバランスが必要(安全が確保されるためにはこのぐらい費用がかかる、というのを確実にしたうえでの利益計算)であり、両者の記事を読んでいくと、どうも共通するのは過酷な労働条件と未熟練工の雇用という利益確保に走ったことによる事故と暗示しているかに思えます。

by fukimison | 2009-06-04 11:37 | 事故  

<< 英、バターシー再開発計画の新提案 Smart Grid >>