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ベニスの橋

サンチャゴ・カラトラバ(Santiago Calatrava)というスペインの建築家がいます。ちょっと調べたところ、1951年生まれというから、北京オリンピックのメインスタジアム鳥の巣を設計したヘルツォーク &ド・ムーロンが1950年生まれですから、ほぼ同年代の建築家です。アテネオリンピックのメインスタジアムを設計した人です。

橋の設計を多く手がけていることから「橋の巨匠」とも呼ばれています。
かれのサイトはこちら、プロジェクトの中を見るといろいろ出ています。

その巨匠がベニスのグランドカナルにかかる橋を設計、このたび完成したのでそのお披露目をしようとしたら、それが延期になったとという記事が8月27日付けのガーディアン紙に出ました。

この記事にもありますが、昨年の今頃、ベニスで大反発を受けているという記事を読んだ記憶があります。その理由として必要ない、安全といい難い、ハンディキャップのある人が利用しにくい、そしてあまりに現代的すぎるというもの。
ベニスの運河にかかる橋ですから、ある程度の調和が必要だと言うのはわかります。

実際、スチールとガラスで構成された全長94mの橋と言われると、ベニスの景観にまっちするとは思えません。

でも、彼の作風は分っているのだから、最初から彼に依頼すべきでなかったというのがワタクシの考え。

その他にも、予定より4年も完成が遅れた上、300%の予算超過だそうです。
これまた凄いですね。予算の3倍ですよ。工期の遅れはよくある話ですが、運河にかかる橋ということで軟弱土壌でトンネルを掘るわけでもないでしょうし、そこまでの工期の遅れは想像し難いし、しかも資材が値上がりしたとしても3倍は凄い。カルトラバ側のプレスリリースはハンディキャップの人々の利便を考えた設計変更を求められたりしたことが、工期の遅れと予算超過の原因であり、それはベニス側のやり方に起因したもので我々には責任はないとしているそうです。
これもまた、凄いです。

そのうち、ひそやかに橋は利用されはじめるのでしょうけど、こういうのは両者にとり不幸ですね。たぶんカラトラバにとってはこれがベニスの景観にあうものだという絶大な自身があるでしょうし、でもその地に何十年も住み続けている人々にとっては、ベニスの橋というのはこうあるべきだという感覚的なものがある。美しい景観、好ましい景観というのは数値化できないだけに、それは違うというのを相手に納得させるのは至難の業です。

その場合、発注者側が欲しいイメージをはっきり提示し、著名というよりも、そのイメージを具現化できる設計を行う建築家を選ぶというプロセスを選んだ方が良かったんでしょうね。

by fukimison | 2008-08-28 16:48 | プロジェクト  

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